富山県の生産者さんや工芸作家さんたちを応援するシリーズです。
富山市のガラス工芸家、岩瀬明子さんのお話を聞きに行きました。
どんな想いで、モノを作っているのか、その想いを聞いてきました。
とやまマリアージュとの連動企画。
食のイベント「富山week (2/18-23) & 富山ナイト (2/24)」
酢飯屋さんのギャラリーでは、岩瀬さんが作ったガラス工芸品が展示されています。
ガラスと山に導かれて
「昨日も天湖森(てんこもり)に行ってきたんですよ。ラッセルで登って行って、頂上でうどんを食べて、新雪をスキーで降りてきました!」
「帰りは楽今日館(らっきょうかん)っていう温泉につかってきました。」
岩瀬さんは山の話となるとテンションが上がります。
特に冬の山のリンとした感じが好きということです。
愛知県出身の岩瀬さんが、海外留学を経て、富山に来ることの決め手になったのは、「雪、温泉、麺類」が揃った土地だったからだと言います。
まさに、この「三大要素」を満喫している様子。
岩瀬さんの制作場所は富山ガラス工房の一角にあります。
自慢の蒔きストーブが焚かれていて、和風の雰囲気の建具がしつらえてあります。
岩瀬さんがガラス工芸へ「キューン」と恋が芽生えたのはテレビで見た吹きガラスの現場。
大学は農学部に進んだものの、大学のそばにガラス工房ができて、恋の火が付きます。
そこでガラス制作を習い始めたり、旅行先はいつもガラスの名産地だったり、恋い焦がれた状態が続きます。
いい具合に市内の再生ガラス工房要員に空きがあり、そこに就職しました。
そして、社員旅行で行ったデンマークの「いい感じの島」に行った時、「ここに行くんだな」と直感し、スッと準備してスッと留学に行きました。
デンマークにいた時、ガラスを吹きながら、ふと外を見ると雪がキラキラ舞っていました。
その光景が大好きでした。
帰国しても「雪があるところ」でガラス制作をしたいと思いました。
海外暮らしの反動で、「温泉」「麺類」が次の制作場所の条件になりました。
導かれるように富山の地に落ち着きました。
来てみたら、そこには剣岳をはじめ、すばらしい山々もありました。
光を届けたい
クラフトマン (= 職人/工芸家)として、岩瀬さんがガラス製品を通して届けたいと思っているもの、それは「光」です。
「こんな曖昧なもの商売にして、すごいなと思います。」
ガラスがどんな「光」を使い手に届けるのか?
その可能性を追い求めています。
「その人が一瞬でも明るい気持ちになってくれれば」
ガラスを通じて注ぐ光が、その人の気持ちを照らします。
富山で暮らす人は、雪のやっかいなところも受け止めながら、雪を大切だととらえています。
雪が降って、身動きがとりにくい時間を、誰もが肯定的にとらえます。
何かを感じる時間だったり、何かを考える時間だったり、何かを生み出す時間だったり。
ガラスがもたらす光は、その「引きこもりの時間」をさらに豊かにすることでしょう。
デンマークを始め北欧諸国でガラス工芸が発達した理由は、「豊かな引きこもり」をするためのものとも言われています。
暗い夜が長い冬に家の中に閉じこもる時、そこに美しいガラス製品があったら、そこに光がもたらされます。
鬱屈した時間が、楽しい時間に変わっていきます。
ガラスが富山の冬をさらに豊かな冬に変えていくでしょう。
同じように、都会で心に冬を抱え込んでいる人に、一筋の光を与えてくれる存在になれるでしょう。
自分らしさの輝き
「私しかできない『今』をどんどん出していきたいです。」
クラフトとしてのガラス製品は、実用性というよりも、その与える「光」への共感が求められます。
それは岩瀬さんらしい生き様の輝きがもたらすものでしょう。
岩瀬さんが東京に出かけていくと、必ず二つの欲求を感じると言います。
一つが「山に行きたい」
もう一つは「吹き場に行ってガラスの作業がしたい」。
自然に触れる時間、何かを生み出す時間、どちらも純粋で、岩瀬さんの恋した時間です。