富山県の生産者さんや工芸作家さんたちを応援するシリーズです。
富山市の鉛筆画作家でもあり、高校の美術の先生でもある、谷英治さんにお話を聞きました。
どんな想いで、鉛筆画を描いているのか、その想いを聞いてきました。
とやまマリアージュとの連動企画。
食のイベント「富山week (2/18-23) & 富山ナイト (2/24)」
酢飯屋さんのギャラリーでは、谷さんが作った鉛筆画が展示されています。
無心に写経のように描く
谷さんの描く鉛筆画を最初に見た時、思わず「すげー」という言葉が出ました。
鉛筆でここまで表現できるのか?と驚きました。
水溜まりに写る街灯、ガソリンスタンドのぼんやりとした灯り、光の浮かび上がらせ方にリアリティを感じました。
鉛筆画をどのように描いていくのですか?
新作の絵を見せてくれながら、次のように話してくれました。
「写真を写経のようにトレースしていきます。そこで変に主張しないようにします。」
そこでは、自分を消しています。一方で、自分が滲み出てもいます。
シンプルに、無心になればなるほど、写実性の中に、何か自分の内面が出てくるとのこと。
「それを見るのが面白いですね」
「無心に描き続けるのが性にあったというか」
様々な表現手段をやってみました、いろいろそぎ落として言って、シンプルな鉛筆画に行きついたとのことです。
自分のルーツはポツンとした白い灯り
どうして、シンプルに行きついたか?
それは、谷さんの「ルーツ」です。
谷さんはフランスのブルターニュ地方に留学していました。
その時に感じたのは、「フランスは田舎が地元に誇りを持っている」ことでした。
例えば、ガレット (そば粉のクレープ)やシードルのような独自の食文化を持ち、それらを地元の人が愛しているのを肌で感じました。
「アーチストたちも自分のルーツを表現の対象にするんです。」
「で、自分のルーツは何かって考えたら、ポツンとした夜景でした。」
郊外の自動販売機、街灯の白い灯り。
暗闇の中にこうこうと明かりを灯すコンビニ。
海外はオレンジの灯り。東京はもっと明るくて、ポツンとしていない。
地方ならではの光景。
異様なんだけど、そういう環境の中で生まれ育ってきた。
「孤独でもあり、あったかくもある。」
そこのコントラストを描きたくて、黒をベースにしようと思ったら鉛筆でした。
鉛筆で描いていくということは、「闇を塗りつぶしている」ことです。
光を描くのではなくて、光を残していくことになります。
「実際、描いてみると、それが楽しくて。」
さらに、富山らしさ?という話題になった時に教えてくれました。
「そう言えば、前に自分の絵に『湿気を感じる』と言われました」
カラッとしていなくて、ジトッとしている、富山の気候なのかもしれません。
富山で暮らしているから、富山の風景を見ているから、富山の空気感が絵に滲み出たのかもしれません。
教員でもある画家
谷さんは高校で美術の先生をしています。
生徒たちには「たくさんの人に会って欲しい」と言います。
「『いろんな人がいるんだよ』ということを伝えたい。」
だから、企画をして、外に生徒たちを連れて行ったり。
谷さんは富山県の大学に進学しました。
その時、他の多くの同級生が富山県外に進学先を求めたのに対し、自分が富山に残ったことを、少々後ろめたく感じていたと言います。
その代わりに、多くの人と交流を持つことを心掛けたそうです。
人と交流するうちに、富山を受け入れることができたのでしょうか。
だからこそ、地元の空気感が自然と出るような、作風になってきたのかもしれませんね。